「四点杖をラインストーンでデコった」

先日外来リハビリテーションを行っている患者さんから相談を受けました.自分が使っている四点杖が地味でつまらないのだそうです.

四点杖というのは多点杖とも呼ばれ,普通の杖の脚が1本であるのに対しテーブルのように脚が四本ある杖の事です.T字杖(1本脚の普通の杖)ではまだ不安定な患者さんでも四点杖であれば安定して歩くことができるため重宝します.もっとも,T字杖に比べて重い,不整地を歩くのに向かない等の欠点はありますが.

歩行練習を開始してから,T字杖を扱えるほどの能力を獲得するまでのツナギのような使い方をすることが多いのですが,それが難しい場合は四点杖を日常生活で使用していくことになります.

で,確かに地味なのです.その方の使っている四点杖はグリップ,ボディなどすべて黒一色で,入院中に病院で使っているぶんにはたいして気にならないのですが,退院してから日常で使うと考えると非常に味気ない.
T字杖はバリエーション豊かです.私が普段使っている福祉用品カタログでは,T字杖の項目は全部で8ページあり,デザインも様々で見ていて楽しいですが(キティちゃん柄まであります),四点杖は1.5ページしかなくてデザインも少ないです.実につまらない.

そこで今回は,この世に1本しかない四点杖を作ったろーかい!ということで四点杖をデコってみました.デコ職人としての経験はほとんどありませんのでやっていることは素人に毛が生えた程度かもしれませんが,他に四点杖をデコる人もあまりいないだろうなと思いましたので紹介させてもらいます.



←T字杖のページ.色々なデザインの杖がたくさん.











←四点杖のページ.少なくて地味.


STEP.1 材料準備
まず材料ですが,スワロフスキー・ラインストーンを下記の数だけ用意しました(SSはサイズStone Sizeです).全て20個入りの包装で販売されているので,記載されている価格は20個分の価格です.

■クリスタルSS5×70(多分)(20個入り126円)

■クリスタルSS7×32(20個入り126円)
■クリスタルSS12×14(20個入り168円)
■アメジストSS7×5(20個入り126円)
■ルビーSS7×2(20個入り126円)
■タンザナイトSS7×15(20個入り126円)
■タンザナイトSS20×12(20個入り168円)
■ライトアメジストSS9×22(20個入り168円)
ラインストーン専用の接着剤は何種類もあり,接着できる素材の違いによるものや硬化後の硬度の違いなどによって分かれているので専門的知識が無いと迷ってしまいますが,どうせ専門的知識が無いので迷っても無駄との結論に達したため一番安かったものを購入しました.まあ何とかなるでしょう.硬化時間は約5分で完全硬化は24時間,硬化後の弾力は高めだそうです.

■セメダイン株式会社 パーフェクトデコ(クリア)×1(280円)
接着剤をいらない紙の上に出して使用感を確認してみました.透明で粘り気が強く,ヘラでつっつくと糸を引いて伸びました.サラサラした接着剤と違って液ダレの心配が無く,曲面の接着に威力を発揮しそうですが,糸を引くので小さい場所にピンポイントで接着剤をつけたい場合には慎重にならないといけませんね.
ヘラで伸ばすとよく広がります.今回は関係ありませんが,広い面への接着にも便利そうです.


STEP.2 ラインストーンの接着
さっそくラインストーンを接着していきましょう.石が密集する場所は接着剤をヘラで塗り広げ,1つだけ接着する場所にはヘラの先端でチョンチョンとつけていきます.透明の接着剤なので多少はみ出しても目立たないでしょう.

花のデザインについてはネットで「デコ」「花」あたりのキーワードを一緒に検索すればサンプルが沢山ヒットしますので,適当に組み合わせてアレンジしています.

余談ですが,ラインストーンはもともとダイヤモンドの代用品として使われていた,ライン川で採った水晶の欠片が名前の由来だそうです.自分はてっきりライン(線)状に飾りつけることが多いからだと思っていました.
そんな調子でどんどんつけていきます.
これでプレート部分が完成しました.次はパイプ部分につけていきます.曲面に接着するため接着剤を若干多めにつける他はやり方は同じです.
パイプ部分も完成.


STEP.3 ストラップ作成
ついでにこの何の飾り気もない黒いストラップも変えてみようと思います.

作業療法士が治療で使う,「マクラメ」とよばれる手法でストラップを作ります(一般的には「ヘンプアクセサリー」の方が分かりやすいですかね?)
材料はヘンプコード(麻紐)とビーズです.

■ヘンプコード(ナチュラル)1.5mm 150cm×2(10mで283円)
■ヘンプコード(ナチュラル)1.5mm 50cm×2(  〃  )
■ガラスビーズ(クリア)×12(20個入り315円)
■ガラスビーズ(パープル)×11(20個入り315円)
まずそれぞれの長さに切ったヘンプコード4本を1つに結びます.
短い方の2本を芯にして,長い方の紐で平結びをしていきます.平結びはマクラメで一番シンプルで基本となる結び方です.




ある程度連続で平結びをしたら,ガラスビーズを間に挟んでいきます.芯となっている2本のヘンプコードにビーズを通し,長い方の2本はビーズの横に沿わせてまた平結びをしていきます.

ビーズ→平結び2回→ビーズ→平結び2回の繰り返しです.
ストラップとして適度な長さになったらまた平結びだけに戻して,最初と同じように4本を結んで完成です.
こんな感じ.これを元のストラップと付け替えます.


STEP.4 完成とお披露目
以上で作業は完成です.
  
  
  
持ち主の患者さんと完成した杖を構えて記念撮影をしました.患者さんが白と紫を基調としたブレスレットと髪留めを持っていましたので,今回の石の色もそれに合わせました.

私は毎年東京で開催されている国際福祉機器展というイベントに時々行くことがあります.目的はもちろん最新の福祉機器を見ることなのですが,会場に来ている方の杖や車椅子,義足などを見ることも楽しみの一つです.

国際福祉機器展のような公共の場に積極的に来ている方たちだけあって,杖も車椅子も義足も非常に個性豊かです.杖には綺麗なストラップがついており,キャラクターもののホイールカバー,カラフルなロゴが入った義足ソケットなどを目にすることができますし,「デコトラかよ!」とツッコみたくなるほど派手な電飾で飾られた車椅子に出会ったこともありました.

杖も車椅子も義足も日常生活の中で常に身につけているものですから,毎日変えられる服やアクセサリー以上に自己主張してくるアイテムです.ファッションに気を使うのと同じように自然に,杖や車椅子,義足でもどんどん自己表現していけたら良いと思います.