「ペグハリネズミ 〜オイルステインとブライワックス仕上げ〜


作業療法士が治療に使う道具に「ペグ」というのがあります.碁盤の目状に穴の開いた板に木の棒を挿して,手指巧緻性を高めるものです.
このペグを立体の木のおもちゃ風に作ってみました.
作業は近所のホームセンターの工作室を借りて行いました.工作に使う材料や道具を店舗で購入すると使わせてもらえます.糸鋸の本体や万力など,様々な道具を貸してもらえるのでとても便利です.
削りくずなどゴミに気を使う必要もないですしね(もちろん使い終わったら掃除しますが).
材料は彫刻用のヒノキ材:90×90×200mm(¥800)を使いました.
まずは各面にシルエットを描いて大雑把にノコギリで切っていきます.
シルエットを描き足しながら,だんだんと形を近づけていきます.
ある程度全体の形に近づいたら,ノコギリではなくヤスリで削っていきます.左図のヤスリは細いノコギリの刃を編み込んだような構造をしていて,ほぼ目詰まりしないので粗削りでザクザクやっていくことができます(気持ちいい).
時々型紙をあてて確認しながら削っていきます. 
だいたいの形が出来上がりました.ここからは紙ヤスリで表面を整えていきます.
紙ヤスリで作業しやすいように,底面にボルトを埋め込み,万力で固定しました.最初の紙ヤスリは#40(紙ヤスリの粗さの単位.40は紙ヤスリの中で一番荒いくらい)で角を落としました.
#320で削ったあとです.見た目はほぼ滑らかになりましたが,触ると木材のザラザラした感触が若干残っています. 
#400(多分紙ヤスリで最も細かいくらい)で削ったあとです.触るとスベスベな感触で気持ちいです.ずっと撫でていたくなります. 
次にペグの棒を作ります.本体はオイルステインで茶色にする予定です.全く同じ色にすると高齢者など視力が低下した方には視認性が悪くなるので,茶色と同系色でありつつやや濃いめのマホガニー丸棒(φ5×900mm,¥280)を使いました 
長さ900mmの棒2本を45mmに切って,計40本のペグを作ります.ある程度まとめてマスキングテープでとめてから切ると,ついでにバリも防ぐことができるので後の処理が楽です. 
45mmに切ったら角をヤスリで滑らかにしてペグは完成です. 
次は本体にペグを挿す穴をあけます.ハリネズミの針っぽくなるような配置に,計40本のマーキングをします. 
ペグを挿した時の角度が仕上がりのポイントなので,まずは失敗したときに修正しやすいように細い穴をドリルであけ,ようじを挿して角度を確認しながら慎重に進めていきます. 
全部の穴をあけたところです.全体の角度とバランスを確認します. 
ペグに合わせた太さで穴をあけました.ペグの直径は5mmですが,5mmの穴ではピッタリすぎて挿すのに力がいるため,5.5mmのドリルを使用しました.
またペグを挿した時に頭側ほどペグが短くなるよう,穴を深くあけました.
 
で,穴をあけてから気付いたのですが,不用心にドリルをガリガリぶっ挿した結果,穴の周囲がけっこう荒れてしまっていますね.これはマズいので何とか修正してみます. 
木材の表面処理用のこんな形のドリルヘッドを使って,穴の周囲をならすことにします. 
こんな感じで許容範囲ということにします. 
本体を油性オイルステイン(オーク)で色付けします.オイルステインはペンキやニスなどの塗装と違って木材に染み込むため,多少表面が傷ついても色落ちしないメリットがあります.しかし表面を保護する機能はないため,塗った後も表面を触ると多少色落ちします.そのためブライワックスを上塗りして定着させます. 
オイルステインは塗るとどんどん染み込んでいくため,筆や刷毛で丁寧に表面をならす必要はありません.布に適当に染み込ませてじゃんじゃか塗っていきます. 
2〜3回重ね塗りすると,だいぶ味のある感じに仕上がってきました.木材の繊維の詰まったところは染み込みにくく,他は染み込みやすいため,木目がきわだってくるのがオイルステインの特徴です. 
ブライワックスとは,いわゆる表面保護用のワックスです.木材や金属など様々な素材に対して使えて,深みのある味わいに仕上がります.
ところでオイルステインもブライワックスも石油系のかなり強い臭いがするので,換気をきちんとしないときついです.
 
ブライワックスを塗って,布で磨いたあとです.写真では違いが分かりにくいですが,ツヤがより均一になり落ち着いた感じになりました.アンティーク家具っぽいです.
ペグにも同じようにブライワックスを塗りました.
 
ペグを収めて完成. 
リハ職向けのちょっと専門的な話ですが,このペグハリネズミは従来のペグボードと違い,ペグの角度がすべて違います.そのため多様な手指の巧緻性や上肢機能をトレーニングできるほか,向こう側をのぞき込むため体幹の制御機能,さらには立体視や空間認知など視覚や高次脳機能にもアプローチできるという画期的なペグなのです!!(自慢)