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イラストレーターと
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理学療法士のサイト

見出しNo.02 雨が降ると膝が痛い

天気が悪い時、私たちは低気圧の中にいる

 雨や曇りなど天気の良くない日に、身体の痛みや不調を訴える患者さんがたくさんいます。症状がひどい人になると台風の接近が痛みの強さによってわかったり、「膝が痛みだしたから、もうすぐ雨が降るよ」なんて言い出したりして(ホントに降りました)、不謹慎ですが「まるで気象予報士のようだ」と思ってしまいます。
 これらは気象病と呼ばれるものです。私たちの身体には、気圧という空気の重みが常にかかっています。天気予報の番組で「高気圧」や「低気圧」という言葉をよく聞くと思いますが、気圧は天気と大きな関係があります。
 低気圧の場所では雲が発生しやすく、天気は曇りや雨が多くなります。ですので、いわゆる天気の悪い日というのは低気圧の中にいるということになります。台風も「熱帯低気圧」と呼びますね。


低気圧が身体の不調を引き起こす

 山登りにビニール袋入りのスナック菓子など密封されたものを持って行くと、頂上付近では袋がパンパンに膨張するという現象を知っているでしょうか。山の頂上はふもとよりも気圧が低く、袋をおさえつけている空気の圧力が弱まるために、袋が膨らむのです。これは私たちの身体も同様で、低気圧の中では身体全体が膨張します。もちろんスナック菓子ほどわかりやすい変化ではありませんが、これにより私たちの体は確実に影響を受け、様々な症状を引き起こすのです。
 例えば身体全体が膨張して浮腫(むくみ)が生じるために全身の倦怠感が起こったり、身体の中で柔らかい部分―血管や関節包―などが膨張し、周囲の血管や神経を圧迫することで片頭痛や関節痛を引き起こします。さらには細胞が膨張することでヒスタミンという化学物質が放出され、普段よりも痛みに対し敏感な状態になります。また気管支喘息や関節リウマチなどの病気を抱えている方は、それらの症状が強くなるといったことも起こります。



適応力で気象病に対抗する

 このように私たちの身体は低気圧にさらされた時―つまり天候が崩れだした時―に、様々な不調を訴えます。症状の種類や頻度は人によって異なり、もともとの体質やその日の体調、過去にケガをしたことがあるかどうかなどに影響されます。
 ただし、本来私たちの身体には気象の変化に対して適応するはたらきが備わっており、そのため天候が崩れても気象病の症状が全く出ない人もいます。気象の変化に自分自身の適応力が追い付かなかった場合に気象病の症状が出ると考えられています。つまり、現在気象病に悩まされている人も、自分自身の適応力を向上させることで、気象病の症状をなくしたり、軽くしたりすることができるわけです。


適応力を向上させるには
 では、どうすれば適応力を向上させることができるのでしょうか。気象の変化に対する適応の大部分は、自律神経のはたらきにより行われています。自律神経は運動をつかさどる交感神経と、休息と内臓をつかさどる副交感神経からなります。この2つの神経をスイッチのように切り替えることで、環境変化に対して最適なコンディションを保っているのです。切り替えがうまくいかないと適応もうまく行われません。自律神経を上手に機能させるには、以下のような方法があります。


■規則正しい生活を送る
 人には体内時計と呼ばれるものがあり、この体内時計によって1日の生活リズムを調整しています。体内時計は朝起きた時に太陽の光を浴びることで、時計に狂いが出ないようリセットされます。そのため、夜更かしや朝寝坊を避けて規則正しい生活を送り、朝起きたらすぐにカーテンを開けて太陽の光をしっかりと浴びるようにしましょう。


■エアコンを我慢してみる
 暑いときには汗をかく、寒いときには身体がふるえる、という気温に対する反応を身体にしっかり覚えさせましょう。特に夏、早い時期からエアコンを当たり前のように使っていると、人が本来持っている発汗能力を鈍らせてしまい、体温調節がうまく行われません。エアコンを少し我慢して汗をかくことを身体に覚えさせましょう。数日間でも効果が出てくるようです。


■入浴する
 交感神経と副交感神経はシーソーのような関係にあり、どちらかが強くなるともう一方は弱くなります。またどちらかのはたらきが悪いと、シーソーの振りが悪くなるようにもう一方もうまくはたらかなくなります。入浴によって身体に発汗や血管拡張、血流量増加などの強い変化を起こすことで、交感神経と副交感神経に刺激を与え、それぞれのはたらきを強めることができます。「面倒だからシャワーで」などと言わずに、1日1回しっかりと入浴しましょう。


■ゆったりとした服を着る
 身体を締めつける衣服は交感神経ばかり刺激してしまい、副交感神経への切り替えがうまく行われません。またネクタイなど、頸部の圧迫は特に交感神経を刺激しやすいため、仕事で常にネクタイを締めている方は、昼休みなどにネクタイを緩める時間をもうけましょう。


■軽い運動をする
 軽い運動で交感神経を刺激して発汗や新陳代謝を促し、その後の休息で副交感神経を刺激することで自律神経の良好な切り替えを促します。1日1回、軽く汗をかくくらいの運動習慣をつくってみましょう。


■柔軟体操をする
 身体に痛みや不調を抱えている方は、全身の筋肉の緊張が高い状態にあります。柔軟体操で筋肉の緊張をほぐし、副交感神経への切り替えを促しましょう。グイグイと強い負荷で行う必要はありません。リラックスした気分でゆったりと柔軟体操をしてみてください。

 以上です。いずれも特別な準備や大きな努力を必要とすることなく、今日からでも始められそうなものばかりですね。これらのことは気象病だけでなく、冷え症など自律神経の不調が原因で起こる様々な症状にも有効ですので、それらの症状で悩んでいる方はぜひ試してみてください。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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