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イラストレーターと
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見出しNo.12 重心と介助技術B:支持基底面を広くすると楽になる

支持基底面で物体を支える

 重心に関係した介助技術の話の3つめは、支持基底面についてです。体重を支えるために必要な床面積の事を“支持基底面(しじきていめん)”と呼びます。これは足の裏が床に接している面積だけではなく、例えば四つ脚テーブルなどでは、脚に囲まれた床面積全部をさします。
 この支持基底面が広いほど、物体は安定します。前回の液体の入ったグラスを例に説明すると、右のようになります。テーブルを揺らした時に、どちらが倒れやすいかは明白ですね。


支えることに気をとられると、足場の確保を忘れてしまう

 安全に介助するためには、介助者自身が安定していなければならないというのは前回の通りです。介助する方は足をしっかり開いて、支持基底面を確保しましょう。これは当たり前のように思えるかもしれませんが、意識していないと見落としがちな事です。病院にしろ在宅にしろ、ベッド周りというのは車椅子のフットプレートや靴、おむつ等の荷物がありますので、事前に足場を確保しないと狭いところで無理な姿勢で介助してしまうことになります。ベッドから車いすに移るのであればその動きをイメージして、事前に必要なスペースを確保してから介助を行いましょう。


相撲取りは力学的に安定している

 前回の“重心を低くすると安定する”という話と合わせると、腰を落として脚を開いた姿勢が介助者にとって最も安定した姿勢ということになります。右の写真を見てください。相撲取りの姿勢は力学的に非常に安定している姿勢と言えます。重い体重の相撲取り同士が、ぶつかったりぶつかられたりというのは、激しくバランスの崩れる行為ですから、この姿勢は理にかなっています。余談ですが、「腰を入れる」「腰が引ける」など、格闘技やスポーツの世界でやたらと腰を気にするのは、腰(へその少し下)がすなわち人間の重心だからです。重心を動きの中心に据えて運動を行うと(腰が入っている状態)、力強く安定した動きができます。


 以上、3回にわたって重心を意識した介助技術について解説しました。第1回目でも触れたように、介護の現場で働く方々は腰痛を発症するリスクがとても高く、それだけ介護職員の業務内容が身体的にハードだということを表しています。そしてこの問題は、在宅で介助が必要なご家族がいる方にもあてはまる問題です。患者さんや利用者さん自身が楽な方法で手伝う、ということに気を遣うのと同じくらい、介助する人自身が楽な方法で手伝う、ということを気にしてみてください。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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