学習効果のピラミッド



 学習効果のピラミッドと呼ばれるものについて紹介します.

 これは異なる学習方法による学習定着率(忘れにくさ)の違いを示したもので,ピラミッドの下にある方法ほど学習定着率が高く,
 上にいくほど(その時は理解できたとしても)定着率が低い,つまり頭に残りにくい,ということを表しています.

 学習方法別の定着率は以下の通りです.

 ■講義を聞く(Lecture):5%
 ■読む(Reading):10%
 ■音声化・視覚化(Audio-Visual):20%
 ■実演する(Demonstration):30%
 ■討論する(Discussion Group):50%
 ■体験する(Practice by doing):75%
 ■
他者に教える(Teaching others):90%

 これによれば講義(授業)は,結果的に内容の5%しか頭に残らないということになります.
 だから読む,書くといった予習,復習によって強化しなければならないのですね(知識は一般的に入力,出力を繰り返すことで定着率が高くなります).

 ところで,この学習効果のピラミッドの信憑性はどうかというと,実はこれがはっきりしません.どうも元になっているのは
 エドガー・デールEdgar Daleという方が,その著書Audio-Visual method in teachingで提唱している「経験の円錐」というもので,
 それが教育分野向けにアレンジされたようですが,ピラミッドに提示されている数字(%)には特に根拠が無いようなのです.

 ←「経験の円錐」:経験が概念化するまでを11段階に分類したものだが,数字は提示されていない.

 ただ学習効果のピラミッドの内容を吟味してみると,根拠は薄いにせよ,それなりに理屈は通っているように思います.
 特に上から下に向かうにつれ,その学習方法が受動的なものから能動的なものに変化していく点などは注目したいところです.
 「講義を聞く」といった受け身的な行為から,「討論する」「他者に教える」というようにだんだんと自分から他者に向かって
 アクションを起こす行為に推移していっています.

 私の学生時代に同級生が卒業研究で,二点識別覚について受動的な刺激よりも能動的な刺激の方が精度が高くなる,というのを
 発表していたのを思い出しました.与えられた知識より自分から求めに行く知識の方が定着率が高い,というのは
 感覚的に正しいように思います.つまりこの学習効果のピラミッドについては,数字(%)の信憑性はさておき,
 学習方法の重要度については参考になるものが大きい,ということです.


 講義は一方的なものではなく,読ませたり書かせたり,視聴覚教材を使用することで効果が高まりますし,グループワークを取り入れることで
 より深い理解を促せるでしょう.最終的には
学生自身に授業をしてもらうことで,その学生自身が最も高い学習効果を得られる他,
 それを聴講している他の学生も知識を得られます.教員は学生の行う授業の質を高めるべく視聴覚やグループワークを取り入れるよう
 アドバイスをしていく,ということになります.

 ちなみにピラミッドの70%の「体験する」は実習系授業が該当しそうですが,最も効果があるのは臨床実習(本物を体験する)です.


 そんなわけで,学生の皆さんは自主勉強するときには参考書をただ読んで勉強するより,書いたり声に出したりする方が効果的ですし,
 視聴覚教材が学校にあるならば積極的に利用しましょう.そして知識についてお互いに教えあったり問題を出し合ったり,技術系の知識については
 実際に体を動かして勉強しましょう.またある程度知識が蓄積されたら,学生同士の勉強会でも計画してみてはどうでしょうか.