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イラストレーターと
ハンドメイド作家の
理学療法士のサイト

見出しT字杖と短下肢装具をデコる 〜ラインストーンとマスキングとデコパージュ〜



以前に四点杖をラインストーンで装飾しましたが、今回はT字杖と短下肢装具です。短下肢装具とは足に力のない人のために、身体を支える力を補助するための道具です。生活場面ではほぼつけっぱなしになるのですが、私が理学療法士の学生だった頃から無骨なデザインがほぼ変わっておらず、前々から不満だったのです。患者さんからの依頼で、T字杖2本と短下肢装具の装飾をしました。


ラインストーンでデコ

1本目の杖は前と同じラインストーンを使います。ラインストーンが映えるように黒色を選んでもらいました。

接着剤はクリスタルアートグルー(多用途タイプ)を使いました。前回は点の接着には一度出した接着剤を爪楊枝などでつける必要がありましたが、これはノズルの先が細くなっているので直接つけられて便利です(接着剤が固まってしまったときのためにスペアノズル、さらには掃除用のピンまでついています)。

ベースで使うラインストーンはコスモヘマタイトという色を選びました。ガラスのような輝きではなく金属のような質感で、派手過ぎず渋めに仕上がります。

こんな感じで接着する部分にポンポンと接着剤をつけていきます。

少し待って接着剤が硬化し始めたらラインストーンを置いていきます

モチーフはつる草をイメージしました。

花(実?)を赤いラインストーンでつけます

グリップ部分にボタンで装飾をしたかったのですが、イメージに合うボタンが売っていなかったので、丸い木材を切って自作することにしました。

革細工用の染料を使って着色します。革と同じで木材もよく水分を吸い込むので、きれいに着色できました。染料で着色すると素材の質感を守れるのと、多少傷ついても地の色が出ないというメリットがあります。

実際にグリップを握る位置を確認して、邪魔にならない位置に付けます。

ボタンはヘンプコード(麻のヒモ)を使って結び付けました。

こんな感じ。

これで1本目は完成です。


マスキングとスプレーで水玉

2本目は水玉模様が希望だったので、マスキングテープに穴を開けた上からスプレーを吹き付け、水玉模様を作ります。

穴を開けるのは革細工用の穴開けポンチを使おうとしたのですが、私は目的の大きさのポンチを持っていないうえに買うと結構高いのです(多分1000円くらい)。どうしたもんかと思っていたら、なんと100円ショップで売っていました。正規品(?)と比べれば切れ味は落ちるのでしょうが、穴を開けるのは革ではなくテープなのでまったく問題ありません。助かりました。

マスキングテープは目盛りのついているカッティングボードに貼ってから穴を開けると、間隔を測る必要が無くて楽です。

穴を開けたマスキングテープを杖に貼りつけ、着色する部分以外をラップとテープで覆います。

スプレーを吹き付けたところ。

テープをはがすと、こんな感じできれいに水玉模様ができます。水玉の上からクリアー系のラッカーでスプレーすると耐久性が増します。

グリップの装飾は水玉模様に合わせて球体のビーズを使い、同じくヘンプコードで固定します。

これで2本目完成。


デニム生地をデコパージュ

最後に短下肢装具の装飾です。患者さんが使っているのはシューホーンブレースというタイプの、プラスチックでできている装具です。肌色のものが一般的ですが、装飾を考えて黒い色で作ってもらいました。

そのままではテカテカのプラスチックの質感丸出しで、普段着に全く馴染みませんので、デニム生地をデコパージュで装具に接着します。
デコパージュとは、一般的にはデザインの描かれた薄い紙などを、服や靴、家具などに接着する技法です。カラフルなペーパーナフキンをセッケンにデコパージュしているものなどが、よく紹介されています。

目的の形に布を切って、端をミシンで処理します。

ベルトの位置などが合うか確認。

デコパージュ用の接着剤は、接着する素材や用途に合わせて何種類かあるのですが、今回はデコポッジ・オールパーパスを使いました。普通は接着用とコーティング用で違う接着剤を使うものなのですが、これは共用で使えて楽だからです。使える素材の種類も幅広く、今回使いたい布とプラスチックもカバーしています。

まずは装具の接着する面全体に接着剤を塗ります。接着剤の定着力を高めるため、目の粗い紙ヤスリでプラスチック表面を傷つけてから塗ります。

次に布に接着剤を染み込ませながら、装具に接着していきます。
シューホーンブレースは密着性を高めるため、患者さんの足の形に合わせて型取りして作られています。そのためかなり複雑な曲面を持っています。一般的なデコパージュはペーパーナフキンなど薄い素材を接着するため、接着面が曲面であってもきれいに貼り付けられます。しかしデニム素材は伸縮性がないため、しわをつくらずに接着するのは苦労しました。端から少しずつ、布を引っ張りながら合わせていきました。

これで接着は完了です。

次により耐久性を高めるため、布の上からも接着剤を塗布します。これにより装具の表面の接着剤、布に染み込んだ接着剤、布の上から塗布した接着剤が一体化し、より強固になります。

さらに耐久性を高めるため、ドリルで装具に穴を開けて、布を直接装具に固定します。短下肢装具をつけて生活していると、歩き方によっては装具自体が家具等にガツガツぶつかることが多く、端の部分の耐久性はなるべく高めておきたいところです。

足首付近の布を飾りボタンで固定しました。またそれに合わせて、ベルトの端にも革を切って飾りを作りました。

上端の固定にはジーパンをイメージして、スナップに使う金具を使いました。

完成。




青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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