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イラストレーターと
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見出し100均商品で安価なスポークカバーを作る


スポークカバーというのは車椅子の車輪の側面(スポーク部分)に付けるカバーのことで、車椅子を操作する際に手や服がスポークに巻き込まれてしまうのを防ぐ部品です。脳卒中の症状には「半側空間無視」や「身体失認」など、自分の片側の手足に対して極端に注意力が落ちてしまうものがあります。そのような症状のある患者さんが車椅子を操作すると、片側の手が車椅子の外側にだらりと垂れ下がっていても、かまわず車椅子をこいでしまうため、手がスポークに巻き込まれてケガをしてしまいます。
ですから非常に重要な部品なのですが、市販品はだいたいどれも1万円前後です。今回は100円均一ショップにあるものを使って、スポークカバーを自作してみます。


スポークカバーはPET樹脂でできています。ペットボトルと同じ材質ですので、あんな感じの程度柔軟性を備えたプラスチック板を買いました。スポーク部分をまるまる覆える大きさがあればよかったのですが、無かったので2枚買ってつなげることにします(390mm×550mm、厚さ0.75mm)。


設計はこんな感じです。スポークは車輪軸を頂点とした円錐状になっているので、円状の板に切れ込みを入れて、スポークにぴったり沿うように円錐にします。いちいち計算しているのはただの自慢です。実際は切れ込みを入れた円盤をスポークにじかに沿わせて合わせても良いのですが、計算が合ってたときに気持ちいいので。


2枚を接合するためのつなぎ目も考慮して、1枚分の形はこのようになります。


同じ形で2枚作りました。直径は車椅子のタイヤの大きさにより異なります。


外側に切れ込みが入っているのは、ハンドリムの固定部分をよけるためです。車椅子の車輪は自転車と違って、ハンドリム(手で掴んでこぐための部品)が取り付けられています。


2枚をつなぎ合わせ、スポークに沿わせて仮止めしたところです。計算が正しかったことが証明され、ぴったり合って非常に気持ちいいです。


2枚の接合は革細工用の留め具を作業療法室から拝借してきて使用しました。留め具でなくても、2枚の板が交互にかみ合う構造で簡単には外れませんから、接着剤やテープでも大丈夫だと思います。


スポークへの取り付けはコードフックを使うことにしました。これなら取り付けた後に外すこともできるからです。


横から見るとこんな感じ。


フックを接着する前に注意点が一つあります。標準的な車椅子に使用されているスポークには、スポーク数が14本のものと18本のものの2種類があります。コードフックの特性から気軽に着脱はできますが、スポークの位置が2種類で違うために、14本タイプの位置に合わせたものを18本タイプにつけ直すことはできません。まぁどうせ100円ですから、フックそのものをつけ直してもいいですが。


フックを接着しているところです。14本タイプの場合、外側のスポークは7本ですので7か所つけます。すべて同じ向きにつけて、回せばスポークがフックに噛みあうというわけです。


完成。板2枚とコードフック合わせて300円で作ることができました。留め具は作業療法室にあるものを使いましたが、接着剤などを買ったとしても、ひとつ400円で作れるのはお手軽です。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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