■調節して自分だけの杖に!
「杖を買ってはみたけれど、どうやって長さを合わせれば良いかわからない!」「自分に合った杖の長さってどれくらいなんだろう?」今回は杖の調節の話です。杖はその長さによって使い勝手が大きく変わります。杖が長すぎると体重をかける位置が高くなるためにバランスをとるのが難しくなり、逆に短すぎると腰が曲がってしまうからです。
前回、杖の種類について説明しました。自分の症状に合わせて杖を選ぶことが、まずは一番大切なことですが、その杖を自分の体型に合わせて調節してこそ、一つしかない自分だけの杖と言えるでしょう。
■杖を切る
杖の長さを変えるには、杖が伸縮式のものか、そうでないかによって方法が異なります。伸縮式の杖は杖についているプッシュボタンを押しこんでスライドさせることで長さを変えられるので簡単です。この機能が無いと切って長さを調節することになりますが、伸縮式であれば切りすぎてしまって元に戻せない、という事もないため、まだ自分に合った杖の長さがよく分からない方には特におすすめです。
伸縮式でない杖は切って長さを調節します。木製の杖は一般的なノコギリで切ることができますが、金属の杖はパイプカッターという道具で切ることになります。杖先についている滑り止めのゴム(先ゴム)は引っ張ればとれるようになっているので、切って短くしたらまた先端にはめてください。また先ゴムは厚みが1cm程ありますので、切る時は先ゴムをはめたときの厚みも考慮して切ってください。
■長さの目安
杖の長さを決めるとき、私たち理学療法士は「大腿骨大転子」や「橈骨茎状突起」など、骨に存在する目印を基準にします。しかしこれは触診技術が必要になってきますし、背中や膝が曲がっている方が使うときの微調整なども専門的知識が無いと難しいでしょう。
ですからここでは、杖の長さを決めるときによくつかわれている計算式を紹介します。
例えば身長160cmの人であれば、杖の長さは82〜83cmが適切ということになります。実際に杖をついてみると、軽く肘を曲げた状態で足の外側あたりにつける長さになるはずです。これはT字杖だけでなく、ロフストランドクラッチ、松葉杖など、ほとんどの杖で使えます。
ただしこれはあくまで目安で、筋力や歩き方の癖などによって、使いやすい杖の長さには若干の個人差があります。切りすぎてしまうのが心配であれば少し長めに切った長さから試しながら調節してみてください。購入したお店で伸縮式の杖が借りられるのであれば、一度それで確認したうえで同じ長さに合わせれば良いでしょう。
■先ゴムはすり減っていませんか?
最後におまけ程度の話ですが、先ゴムについての話をします。杖を長く使っている人、特に屋外に出かける機会の多い人はご自分の杖の先ゴムがすり減っていないかを確認してください。
靴底がすり減るように、杖も長く使っていれば先ゴムがすり減っていきます。ミゾが無くなるほどすり減ってしまうと、水滴一滴でも簡単に滑ってしまいますので、杖を長く使い出したらたまには先ゴムを点検してみてください。先ゴムは単品で市販されていますので、すり減ったら交換することができます。
次回は杖の使い方のコツについて解説します。