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イラストレーターと
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理学療法士のサイト

見出しNo.07 杖のコツ

 今回は杖の使い方についてお話します。ケガや病気で杖が必要になったとき、今では杖の専門店や福祉用具店だけでなく、ホームセンター等でも気軽に杖を購入することができます。しかし気軽に購入できるがゆえに、きちんとした使い方を教わらないまま、勘違いをして間違った使い方をしている方も時々見かけます。普段から杖を使っている方は、自分の使い方に間違いがないかどうか、もう一度確認してみてください。


片手杖の持ち方・歩き方

握る
 まず杖の握り方についてですが、写真のAまたはBのように握りましょう。時々CやDのような握り方をしている人を見かけますが、これは間違いです。AでもBでもどちらでも構いませんが、Aの方がより疲れにくく、Bの方がより固定力が高いです。好みで選んでください。
 

 

持つ
 そして杖は悪い脚と反対側の手で持ちます。杖は悪い脚と同じ側の手で持つと思っている人も多いのですが、同じ側に持つのはドラマや映画でも時々見かける間違いなので、勘違いしてしまうのかもしれません。反対側の手に持つのは、杖と脚をついたときに支える面積が広くなり、安定するためです。これは杖の種類に関係なく、片手で杖をつくときにはほぼ全ての杖にあてはまる持ち方です。
 杖をつく位置は、まっすぐ立った時につま先からおよそ15cm外側、15cm前方あたりが良いでしょう(だいたいの目安です)。
 

歩く
 歩き方は、3動作歩行(常時2点支持歩行)という歩き方が基本です。@杖→A杖と反対の脚→B杖側の脚の順番で出します。常に杖か脚の2点で支えることになるので安定した歩き方です。
 

 
 そして慣れてきて物足りない場合には、杖と反対の脚を同時に出す2動作歩行(交互2点1点支持歩行)という歩き方もあります。3動作歩行よりも手順が少なく速く歩けますが、より高いバランス能力が必要なため注意してください。
 



階段
 杖で階段昇降を行う場合、昇りと降りで脚を出す順番が変わります。まず昇りの場合ですが、最初に杖を1段上に出します。次に悪い脚と反対の脚(杖と同じ側の脚)を同じ段に乗せます。そして最後に悪い脚(杖と反対側の脚)を同じ段に乗せて揃えます。これの繰り返しです。歩くときとは脚を出す順番が逆になるのでややこしいのですが、自分の身体を段の上に引き上げるには、より力のある脚を先に出した方がやりやすいのです。
 

 
 降りるときは最初に杖を1段下におろし、次に悪い脚を同じ段におろし、最後に悪い脚と反対の脚を同じ段におろして揃えます。昇りと逆ですので注意してください。
 階段は昇るときには力が、降りるときにはバランスが軸になる脚に必要になります。そのために昇りと降りでは脚を出す順番を変える必要があるのです。ただし脳卒中など一部の病気による後遺症のある方は、身体の使い方によっては逆の出し方の方が楽な場合もありますので、詳しくは理学療法士に相談して下さい。
 

 


松葉杖の持ち方・歩き方

持つ
 次は両手での松葉杖の使い方です。杖をつく位置は片手杖のときと同様、それぞれ左右のつま先からおよそ15cm外側、15cm前方あたりにつきます。肘が軽く曲がり、脇の下に指が3本くらい入る長さに調節しましょう。松葉杖の上部クッション部分にはつい寄りかかりたくなってしまいますが、実はあれは体重を乗せる場所ではありません。脇の下には、腋窩神経という腕を動かす神経が通っていますが、松葉杖に寄りかかると腋窩神経が圧迫されて麻痺してしまい、痛みや痺れ、脱力といった症状が出てしまいます。
 

構える
 松葉杖は他の杖に比べて多くの体重がかかるため、安定していることが重要です。杖の上部を、腕と身体で挟みこんで固定するのですが、慣れていないとこれがなかなか大変で、すぐに疲れてしまいます。杖はまっすぐ構えるよりは、前に若干開くように(ハの字になるように)して構えると脇をしめやすくなり、少ない力で固定できるので楽になります。試してみてください。
 

階段
 松葉杖で階段を昇り降りするときは、片手杖のとき以上に順番が大事になります。昇るときには脚を先に1段上に出し、その後杖を同じ段に揃えます。降りるときにはこれの逆で、杖を先に1段下に出し、その後脚を同じ段に揃えます。
 これは絶対に逆にしないでください。逆にすると、昇りでは杖がつっかえ棒になって昇れないだけで済みますが、降りではまるで棒高跳びのように、身体が空中に投げ出されてしまいます。場合によっては大怪我につながりますので注意しましょう。


おまけ:杖ホルダーについて
 日常生活でT字杖を使っていると、座ったときに杖の置き場所に困ることがあります。テーブルに立て掛けても良いのですが、脚をぶつけて倒してしまうかもしれませんし、丸いテーブルでは滑ってうまく立て掛けられません。
 自分の家であれば、下の写真のように簡易杖ホルダーを作ってしまうと便利です。ゴム紐をテーブルの端にテープで留めただけですが、これだけでも意外と重宝します。他にもペットボトルやウレタンで作ったものなど、「杖ホルダー手作り」とネットでキーワード検索すると沢山出てきます。
 また市販品で、杖に取り付けるタイプの杖ホルダーもあります。こちらはテーブルではなく杖に取り付けるので、外出先でも使えて便利です。






青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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