■高齢社会白書
先日、内閣府より平成28年度版の高齢社会白書が発表されました。高齢社会白書は高齢社会対策基本法に基づき政府が国会に提出している年次報告書で、高齢社会の状況やその施策、実施状況がまとめられています。
■男性の平均寿命は80歳を超えたが…
平成28年度版高齢社会白書の第2節第3章「高齢者の健康・福祉」の項によれば、平成25年にいよいよ男性の平均寿命が80歳を超え、男性80.21歳、女性86.61歳になりました。これ自体は喜ばしいことですが、合わせて気にしておきたいのが「健康寿命」です。
健康寿命とは医療・介護に依存せず、日常生活に制限のない健康な期間のことで、男性71.19歳、女性74.21歳となっています。ですから亡くなる前に何らかの介護が必要な期間が、平均して男性で9.01年、女性で12.4年あるということになります(あくまで平均の話です)。
■介護が必要な期間が増えている
平均寿命も健康寿命も年々延びていますが、平均寿命の延びに比べて、健康寿命の延びはやや小さくなっています。平成13年から25年にかけて、平均寿命の延びは男性2.14年、女性1.68年ですが、健康寿命の延びは男性1.79年、女性1.56年に留まっています。これは亡くなる前に介護が必要な期間がだんだん増えていることを示しています。
そしてそれを反映するように、高齢者(65歳以上)の要介護者数が急激に増加しています。介護保険制度における要介護者(要介護または要支援と認定された人)数は、平成25年で569万人にのぼり、平成15年からの10年間で約200万人増加(およそ1.5倍!)しています。この人数は高齢者全体の17.8%を占めています。
■平均寿命を延ばす試みでは健康寿命を延ばせない
要介護状態になると、それを支えるご家族等の人的・経済的負担が増加します。家族が介護・看護を理由に離職・転職しなければならないケースも多く、また介護者として最も多いのが配偶者であることから、いわゆる老老介護も懸念されています。
これらの問題を解決するためには、平均寿命と健康寿命の差を減らすことが重要です(極力介護を必要とせず、亡くなる前まで自立生活を送るいわゆる「ピンピンコロリ」)。
介護が必要となった主な原因については、「脳血管障害(脳卒中)」が17.2%と最も多く、次いで「認知症」16.4%、「高齢による衰弱」13.9%、「骨折・転倒」12.2%となっています。これらは主な死因となっている疾患とは異なる部分が多く、そのため平均寿命を延ばそうとする試みでは健康寿命を延ばすことはできないということになります。
■リハビリ専門職の介護予防分野への進出
介護が必要となった主な原因に挙がっているものは、そのほとんどがリハビリテーション医療に関わるものであり、これらは日頃からの適切な運動や健康管理によって回避・軽減できる余地が十分にあります。今はまだ自分で生活出来ているけれど、将来的に要介護状態が懸念される人、いわゆる虚弱高齢者をできるだけ少なくし、地域でいつまでも元気に暮らしてもらうことが、介護予防の大きなかなめです。そのために転倒予防教室や健康サロンなど、閉じこもりをなくして健康に過ごそうという取り組みが、すでにたくさん行われています。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーションに関わる専門職は、今まで疾病によって障害を負った人を中心にかかわってきましたが、今後は介護予防の分野にも積極的に関わっていくことが期待されています。私も理学療法士として、専門的知識・技術を介護予防のためにどんどん活かしていきたいと思いますので、一緒に「ピンピンコロリ」の精神で頑張っていきましょう!