■高齢者の住宅事情
前回、平成28年度版の高齢社会白書から健康寿命についてお話ししました。今回は同じく高齢社会白書から、高齢者の住宅内の事故について読み取れることをお話ししたいと思います。
■高齢者の7割は自宅に満足している
高齢者の現在の住居に関する満足度において、平成26年の調査から、賃貸住宅を含めても約7割は現在の住居に満足しているようです。不満な点には、「住宅が古くなったりいたんだりしている(63.8%)」「住宅の構造や設備が使いにくい(32.2%)」、「家賃、税金、住宅維持費等の経済的負担が重い(24.8%)」などがあります。
■高齢者は若年者と比較し玄関や廊下の事故が多い
去年度の高齢社会白書の資料「虚弱化したときに望む居住形態」からも、病院志向から自宅を希望する方向へ推移していっていることがうかがえます。理学療法士の立場からも、ケガや病気を経験してもリハビリテーションを経てご自宅へ退院されていくのは喜ばしいことだと思います。
ただしご自宅で生活するにあたって注意したいこととして、高齢者の事故発生場所で住宅が抜きん出て高いことが挙げられます。住宅や道路、山や川など、どんなところで事故が起きやすいかという統計調査では、住宅での事故発生率が断トツで高いのです(ただし、これは住宅が外よりも危険という事ではなく、単純に住宅で過ごす時間が長いという事もあるのでしょうが)。住宅内の場所別の統計では居室が最も高く(5割弱)、次いで階段、台所(ともに2割弱)となっています。また若年者との比較をしてみると、若年者は居室以外では台所での事故(調理中の火傷でしょうか?)が多いのに対し、高齢者では玄関や廊下が多くなっています。
事故内容の内訳については「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故−高齢者編−(平成25年3月)」に載っていますが、転倒、転落を合わせると5割を超えるようです。つまり住宅内の事故は移動時の転倒・転落が最も多いという事になります。
■バリアフリーは住宅にかなり浸透している。しかし…
近年ではバリアフリーの考え方が浸透し、住宅もそれを考慮して設計されているものがほとんどですが、住宅改修のため患者さんの御自宅へ伺うと、昔ながらの日本家屋など段差の多い家はまだたくさんあります。また住宅自体がバリアフリーでも、生活の中の何気ないことでバリアを自ら作り出してしまうこともあります。次回は住宅内の事故を起こしやすいポイント、またそれを解消する方法についてお話します。