■居室、階段、玄関での転倒事故が多い
前回は平成28年度版の高齢社会白書から、高齢者は屋外よりも屋内、特に居室内の事故の方が多いこと、また若年者と比較すると玄関や廊下の事故が多いこと、事故内容は転倒・転落が多いことがわかりました。今回はこれをふまえて、住宅内の転倒事故を防ぐ環境整備についてお話ししようと思います。
高齢社会白書のデータの参照元である国民生活センターの「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故−高齢者編−」や「病院危害情報からみた高齢者の家庭内事故」を見てみると、住宅内事故の細かい内訳が掲載されています。前回のおさらいも含まれますが、まとめると、
@事故内容は「転倒・転落」が最も多い
A高齢者では「居室」、「階段」、「台所」、「玄関」の順に多い
B事故時の行動は「歩いていた」、「調理以外の家事」、「調理」の順に多い
ということがわかります。ところで事故時の行動の第3位は調理中ですが、これは事故発生場所第3位である台所と大きな関連がありそうです。事故内容では切傷が第3位、熱傷(火傷)が第4位に挙がっていますから、台所では調理中の切傷や火傷が多い、ということなのでしょう。
だとすれば、高齢者の事故で最も多いのは、「居室」、「階段」、「玄関」で「歩いていた(移動していた)」ときの「転倒・転落」事故、ということになります。以下に転倒予防のための環境整備のポイントについてまとめてみました。
■まずは動線を確認する
動線とは生活の中で実際に通る道筋のことです。1日の中で最も長く過ごす場所(おそらくは居室の自分の席ですが)を中心として、トイレ、寝室、食堂、玄関など、実際に通る場所をたどって確認します。
環境整備を行うとき、屋内環境をすべて安全に、と考えてもどこから手を付けて良いかわかりませんから、まずはこの動線上から手を付けてゆきます。ありがちなのが、電化製品のコードやコタツの布団の端が動線上を横切っている例です。接続するコンセントの位置を再検討し、動線に交わらないようにしましょう。また散らかしがちな新聞広告や雑誌類も、誤って踏むと滑って危険ですから置く場所を限定しましょう。
■カーペットは端、毛足の長さに注意
カーペットの端は浮きやすく、つま先に引っかかるとまとわりついて大変に危険です。端を床に両面テープで接着するなど、浮き上がらない工夫をしてください。また毛足の長いものも同様に足を取られやすいですから避けるようにしましょう。
どうしてもカーペットを使いたいのであれば、パネル状のものがおすすめです。硬い素材ですから浮き上がりにくく、ホームセンター等で様々なデザインがあるので内容に合わせやすく、また汚れたらその部分だけ洗ったり交換できるのも魅力です。
(出展:www.carpet-mart.jp)
■フローリングと靴下の組み合わせは危険
フローリングの上を靴下で歩くことは滑って危険なだけでなく、足の指の動きを制限してしまいます。実は足の指はバランス能力に大きな関わりがあり、足の指の動きが悪くなることは歩行時のバランス低下につながるのです。靴下を履くときには滑り止め付きのものを使ってください。またスリッパも脱げやすく危険ですから使用は避けましょう。
■夜間の動線には間接照明と床を目立たせる工夫を
過去のコラム「最近、暗い場所でも自信をもって歩けますか?」にも書きましたが、高齢者は暗いところで目が慣れるのに時間がかかります。夜中にトイレに行きたくて目を覚ました際の助けになるよう、ベッドからトイレの間には足元灯などの間接照明を設置しましょう。コンセントに挿すだけで使えるセンサー付き照明が便利です。
また階段には間接照明と同時に、踏み外すことのないよう縁に滑り止め等の目印をつけましょう。テープを張るだけでもわかりやすくなります。
色は白が暗いところでの視認性が高いようです。あまり目立つものを階段に貼るのに抵抗がある方は、一番上と一番下の段に貼るだけでも階段の始まりと終わりがわかるので上り下りしやすくなります。
以上、屋内での転倒事故対策について、特に環境調整に絞ってまとめました。電化製品のコードをまとめたり、カーペットの端のしまつなど、ちょっとしたことが事故の予防につながりますから、この機会に家の中を見直してみてください。