本文へスキップ

イラストレーターと
ハンドメイド作家の
理学療法士のサイト

見出しNo.22 水たまりのできない道路 〜排水性舗装によるバリアフリー〜

車椅子が勝手に曲がる

 車椅子を押しながら道路を歩いていると、やけに片側にばかり曲がっていく、という経験はないでしょうか。これは道路が平らではないために起こる現象です。
 道路は雨水を排水溝に集めるため、中央が一番高くて端にいくほど低く造られています。極端に言うとカマボコのような断面です。歩いていても意識できないほど小さな勾配ですが、車椅子に乗っているとその影響を感じる事ができます。自動車を運転中にハンドルから力を抜くと、勝手に左に曲がっていくのもこれが原因です。
 車椅子は左右のタイヤを均等に動かすことでまっすぐ進みます。よってそのような道路ををまっすぐ進むには、片方のタイヤだけを常に多く動かさなければならないので、片腕だけが非常に疲れます。この問題を解決してくれる方策の一つが「排水性舗装」です。


排水性舗装

 排水性舗装とは、隙間のあるアスファルトによって雨を透過させ、集めた雨水を側溝に排水する機能を持った舗装のことです。似た機能を持つものに“透水性舗装”があり、こちらは浸透した雨水がそのままアスファルトの下の土に染み込んでいきます。どちらもアスファルト上に雨水が残らないのが特徴です。
 この排水性舗装には、以下のようなメリットがあります。

メリット
 @道路表面に排水を目的とした傾斜をつける必要がない為、道路を完全に平らにできる
 A水たまりができない→歩行者への水撥ねが減る
 B水たまりができない→タイヤが滑りにくい、ハイドロプレーニング現象が起こらない
 C水たまりができない→照明が水たまりに反射せず、車線区分線が見やすい
 D多孔質のアスファルトが音を吸収するため、騒音が軽減する
 E多孔質のアスファルトによって熱放散機能が上がるため、ヒートアイランド現象が軽減する


 車椅子ユーザーにとっては@やAの恩恵は大きいと思います。車椅子に乗ると頭の高さは子供と同じくらいになりますから、水跳ねは全身に及ぶ危険もあります。ですから現状の舗装はどんどん排水性舗装に転換すれば良いと思うのですが、転換が進まない事情もあります。排水性舗装には以下のようなデメリットもあるからです。

デメリット
 @施工にかかるコストが高い
 A砂やホコリが隙間に詰まったり、車の重みでつぶれたりして耐久性が低い
 B従来の補修では隙間をつぶしてしまうため、補修には全面打ち換えが必要


 つまりは施工と補修にかかる費用と手間が、通常の舗装よりずっと多く必要ということです。そのため際限なく排水性舗装に転換することはできず、高速道路や交通量の多い主要道路から優先して転換が進むことになります。


交通量の少ない道路は転換率が低い

 国土交通省の平成17年の道路交通センサスのデータ(上表)からは、地方道の施工割合が非常に低いことがわかります。そもそも総延長が非常に長いので仕方のないことなのかもしれませんが、車椅子ユーザーがその恩恵を十分に実感できるのはまだまだ先になりそうです。今後も交通上重要な幹線道路から優先して転換していくでしょうから、生活道路は最も後回しにされるかもしれません。


歩道は積極的に透水性舗装への転換が進む

 しかしそれでも、車椅子ユーザーのためのバリアフリー化が少しずつ進んでいることには間違いなく、排水性舗装の普及を受けて国土交通省は「歩道における段差及び勾配等に関する基準」を以下のように改正しています。

「歩道の横断勾配については、歩道面の雨水の排水などを考慮して2%を標準としますが、透水性舗装の採用などにより排水が図れる場合には、車椅子などの通行を考慮して、勾配を1%以下とすることとします」
                (歩道の一般的構造に関する基準の改正について:国土交通省ホームページより)


 透水性舗装は排水性舗装より設置コストが低く、また歩道であることから車の重みで空隙がつぶれてしまう事がありません。つまりメンテナンスのコストも低いということです。ですから歩道には積極的に使用される傾向があります。歩道に限って考えれば車道よりもずっと身近になってくるでしょう。皆さんも雨の日に道路を通ったら、水たまりができているかどうか注意してみてください。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

Mail:sofu-s★sofustudio.com
(★を@に変えて送信してください)