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イラストレーターと
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理学療法士のサイト

見出しNo.26 座った方が腰に悪い?

座った方が楽…しかし椎間板へのストレスは高い

 立っている姿勢よりも座った姿勢の方が楽、というのは多くの人の共通意見だと思います。ところがここに興味深い研究結果があります。下の図を見てください。

 これは腰椎の椎間板にかかる圧力を、立っている時を100%として様々な姿勢で調べてみた結果です。人の背骨は椎骨と呼ばれる円柱状の骨がいくつも積み上げられている構造をしていますが、椎間板はその椎骨と椎骨の間にあり、衝撃や圧力を支えるクッション材にあたります。そのため椎間板の圧力が高いということは、それだけ背骨に対してストレスがかかっているということになります。例えば一番左の仰向けの姿勢では25%ですから、立っている時に比べて圧力は1/4です。これはまあ納得できる結果ですね。
 しかし座っている姿勢を見てみると140%となっており、なんと立っている姿勢の1.5倍に近い圧力が椎間板にかかっているということになります。どんな姿勢であろうと、体重によって身体のどこかしらにストレスはかかります。良い姿勢とは骨や筋肉、靭帯など様々な組織でバランスよく分担して、1か所にストレスが集中しないようにするものなのですが、姿勢によってはそれができないこともあります。椎間板にとってはそれが座った姿勢ということですね。他にも上半身を前に傾けたり、物を持つことによってさらに圧力は増します。

 椎間板の圧力が高くなれば、それを支えるために筋肉や靭帯など周囲の組織にもさらに負担がかかります。健康な人にとっては実感は無いかもしれませんが、椎間板ヘルニアや腰痛を抱える人にとっては症状を悪化させる危険もあります。実際当院の患者さんでも、座っているよりも立っている方が楽、という声はよく聞きます。長時間の座位姿勢や、前傾で重いものを持つといった動作はなるべく避けるようにしましょう。


どうしても座らなければならないなら…

 とはいえ仕事などで、どうしても長時間座位姿勢をとらなければならない人もいるでしょう。その場合には普段の自分の座位姿勢を見直してみましょう。今回参照した研究結果※では座位姿勢の細かい規定は無さそうですが、座り方によって身体にかかる負担は変化します。
 写真の“×”の姿勢はいわゆる“悪い座位姿勢”です。注目してほしいところは骨盤の角度です。左側の写真は骨盤がゴロンと後ろに転がった状態になっているのが分かるでしょうか。背骨はきれいなS字カーブを描くことで体重のストレスを身体全体に分散できるのですが、骨盤が後ろに倒れてしまうと腰椎のカーブが直線に近づき、その部分にストレスが集中しやすくなります。右側の写真は反対に起こし過ぎです。良い姿勢をとろうと意識しすぎると、このような姿勢になりがちです。
 真ん中の“○”の写真は、立っている姿勢からそのまま股関節と膝を直角くらいに曲げて座った姿勢で、いわゆる“良い座位姿勢”と呼ばれるものの一つです。良い座位姿勢とはどのようなものかについては、判断基準がいくつかあるため意見の分かれるところですが、この姿勢では理想的な背骨のS字カーブを描くことができ、腰椎への負担を分散しやすいという特徴があります。
 ただし筋肉が慣れるまでは結構疲れます。仕事をしながらであれば常に姿勢に気を配るのも大変でしょうから、気が付いたらこの姿勢をとってみる、というところから始めてみてはどうでしょうか。下腹部に軽く力を入れ、骨盤を起こして背筋を伸ばします。胸を張り過ぎて背中を反らさないよう気をつけてください。背もたれが垂直に近いならガイドにしてみると加減が分かりやすいと思います。
 腰痛に悩む人は、普段の自分の座位姿勢を気にしてみてください。

※Nachemson,A:Lumbar intradiscal pressure.In Jayson,MIV(ed):The lumbar spine and Back pain,pp257-269,london:Secton publishing,1976



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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