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見出しNo.31 ロコモとフレイルとサルコペニアを整理しますよ!

運動器に関わりのある3つの用語

 日本は長寿社会を迎えて久しく、人々の注目は平均寿命のみならず健康寿命にも集まってきています。より長く、より健康に生きたいと願うのはごく当然のことだと思います。日本人の健康への関心は高く、TVなどのメディアでも健康番組は昔から人気です。そんな中で日々次々と健康に関する新しい言葉や概念が登場してきますから、情報を最新に保つというのはなかなかに大変なことです。
 最近では“ロコモティブシンドローム(略してロコモ)”という言葉は市民権を得てきたように感じます。介護予防のために日本整形外科学会でもロコモの認知度向上に力を入れており、ロコモ診断のテストの紹介動画がホームページで公開されています。
 そしてこのロコモと同じような場面で使われる用語として、“フレイル”と“サルコペニア”があります。ロコモほどではありませんが、最近ではTVの健康番組でも時々とりあげられるようになりました。これらはいずれも運動器の健康に深い関わりのある言葉です。
 この3つの用語は共通点が多く、混同されやすい言葉ですから、ここで3つの用語の意味を整理してみたいと思います。説明の都合上、サルコペニア、ロコモ、フレイルの順に解説していきます。


サルコペニア

 「高齢期にみられる骨格筋量の減少と、筋力もしくは身体機能の低下」と定義されます。ギリシャ語で筋肉を表すsarixと消失を表すpeniaを組み合わせた言葉です。当初は筋量の減少のみに注目していましたが、現在では筋力や歩行速度など機能的な低下も含んでいます。
 基準としては、握力の低下(男性26kg未満、女性18kg未満)と歩行速度低下(0.8m/秒以下)のどちらかを満たし、かつ骨格筋量が規定値を下回った場合にサルコペニアと診断されます。


ロコモティブシンドローム

 通称“ロコモ”です。「骨格筋、骨、関節などの運動器の機能低下によって立つ、歩くなどの移動機能が低下した状態」と定義されます。筋量の減少や骨粗しょう症、骨折、関節疾患、関節痛などを患うと、筋力やバランスが低下します。その結果、立つ、歩くなどの移動能力が低下するわけです。前述のとおりサルコペニアによって筋量が減少しますから、つまりサルコペニアはロコモの原因の一つと言えます。
 またロコモの対象は高齢者だけでなく若年成人も含みますから、若い人でも他人事ではありません。日本整形外科学会のホームページで診断テストが公開されていますから、ぜひやってみてください。高齢者の問題だから自分には関係ない…なんて勘違いして油断していると、できないかもしれませんよ。

     ※ロコモ診断テストの1例:40cmの高さに腰かけ、片脚で立ちあがる。左右どちらかができれば良い。


フレイル

 「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態」と定義されます。私たちは普段、生活を全力で行っていません。余裕を持って動いています。だから多少のケガや体調の悪い時があっても、普段のペースを崩さずに生活できます。これが“予備能がある”という状態です。しかしフレイルではこの予備能が無く、常にギリギリの状態で生活しているので、一見普通と同じように生活しているように見えても、何かストレスが加わったときに耐えられずに一気に崩れてしまうのです。
 フレイルは運動器についてだけでなく、非常に多くの意味を含んでいて複雑です。というのも、フレイルは高齢者に出現する状態を多方面からとらえる概念であり、筋力低下などの身体的側面だけでなく、精神や心理的側面、さらには社会的側面も含まれるからです。この3つの側面をそれぞれ“身体的フレイル”、“精神心理的フレイル”、“社会的フレイル”と呼びます。
 身体的フレイルは運動機能低下だけでなく、低栄養や口腔機能低下など、身体の機能障害を幅広くとらえています。フレイルとロコモ、サルコペニアの関係については、身体的フレイルの原因の一つにロコモがあり、さらにその原因の一つがサルコペニアということになります。
 精神心理的フレイルは認知症やうつ病など、精神状態が活動に影響することで日常生活動作の低下につながる状態を指します。また社会的フレイルは独居や閉じこもり、さらには経済的困窮など、活動量が制限されてしまうような社会的な問題を抱えている状態を指します。


まとめると…
 以上がサルコペニア、ロコモ、フレイルの説明です。ざっと要約すると次のようになります。

  ■サルコペニア
   筋量の減少と筋力、
   歩行速度の低下
   高齢者
  ■ロコモ
   運動器の機能低下による
   移動能力の低下
   全年齢
  ■フレイル
   身体的、精神的、社会的の3要素。予備力が低下しストレスに弱くなった状態
   高齢者


運動で健康寿命を延ばそう

厚生労働省の国民健康生活基礎調査によると、要介護状態になってしまう原因は以下の通りです。
1位:認知症
2位:脳血管疾患
3位:高齢による衰弱
4位:骨折・転倒
5位:関節疾患
4位と5位は運動器の疾患であり、両者を合わせると全体で最も大きい割合になります。よって健康寿命を高めるためには運動器疾患を早期から予防することが重要です。サルコペニア、ロコモ、フレイルは運動器疾患と密接な関わりがありますから、運動によってこれらを予防することは、健康寿命の延伸に大きく役立ちます。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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