リハビリコラム No.33
1時間座ると寿命が22分縮む


座りすぎは健康に悪い

 “1時間座ると寿命が22分縮む”―ドキリとする文章です.オーストラリアのベーカーIDI心臓・糖尿病研究所が,25歳以上の男女8800人を対象に6.6年にわたり追跡調査した研究によると,テレビを1日4時間以上見ている人は,1日2時間未満の人よりも死亡率が1.46倍になることが分かりました.
 さらにオーストラリア肥満・生活習慣研究(AusDiab)が行った研究解析によれば,テレビ視聴時間が1時間増えるごとに成人の平均余命は22分減少するという計算結果が算出されたのです.今まで感じていた「座りすぎって多分健康に良くないんだろうな」という漠然とした懸念が,研究により数字で明確に示されてしまいました.
 しかし座りすぎが悪影響を及ぼすと言っても「そうか,座ることは身体に悪いのか.じゃあゴロゴロしよっと」ということではありません.この研究の主旨は,テレビを視聴するときにはじっと座っているため,もしテレビを見ていなければ立って歩いていたであろう活動が阻害されてしまうのは問題だ,ということだと思います.つまり運動することで身体にもたらされる良い影響と,座位姿勢をとり続けることでもたらされる悪い影響を考慮して座りすぎに警鐘を鳴らしているので,ゴロゴロしていたらまた別の悪影響があります.


筋活動の低下により疾患リスクが上がる

 以前に「No24 貧乏ゆすりでむくみの改善」のコラムで紹介しましたが,ふくらはぎの筋肉は“第2の心臓”と呼ばれるほど身体,特に下半身の血液循環に貢献している筋肉です.歩くことでふくらはぎを含めた足の筋肉は繰り返し活動しますし,支えなしに立っているだけでもバランスをとるために足の筋肉は活動します.しかし座っているとこの活動がほぼ行われなくなるため,筋肉の活動量は座位と立位では明確な差が生じます.
 これにより下半身の血流が滞り,静脈血栓など死に直結する疾患に罹患しやすくなるのと,運動量が減ることで肥満,糖尿病といった内部疾患にも罹患しやすくなります.さらに長期的には筋肉が痩せて転倒や骨折など運動器の障害にもつながります.


日本人は世界一座っている時間が長い民族

 総死亡率に関する別の研究では,1日の総座位時間が4時間未満の成人と比較し,8〜11時間の人では死亡リスクが15%増,11時間以上だと40%増というデータもあります.
 11時間と聞くと非常に長い時間と思うかもしれませんが,業務のほとんどがデスクワークの人はあながち他人事とは言えないかもしれません.1日の業務時間と食事時間,それに加えて余暇時間の過ごし方(テレビ視聴やスマホ操作など)によっては,意外とすんなり11時間を達成(?)してしまうかもしれません.
 実際日本人は世界で比較しても最も長く座っている民族のようです.上のグラフは世界20か国における平日の総座位時間を調査したものですが,日本人の座位時間はサウジアラビアと並び世界最長の7時間です.


生活に活動を取り入れよう

 イギリスは2011年に座りすぎのガイドライン(英国身体活動指針)を作成し,「就業時間中に少なくとも2時間,理想は4時間座っている時間を減らして,立ったり,歩いたりする低強度の活動にあてるべきである」と勧告しました.前述の世界の座位時間比較について,時間を左右する要因には国ごとの業種の特色や国民性など色々あるのでしょうが,座り続けることは危険であるという意識は,もしかしたら諸外国の方が進んでいるのかもしれませんね.
 とは言え日本でも最近は健康のために立って仕事ができるスタンディングデスクも注目されていますし,業務の中に健康活動を取り入れようとする動きは高まってきています.ただスタンディングデスクは座りすぎの改善に有用であるとする意見がある一方,ずっと同じ姿勢を続けていれば座っていても立っていても健康リスクはあまり変わらないという研究結果も出ています.筋肉の活動が重要ということでしょうか.

 これを機会に1日の自分の姿勢について見直してみてはどうでしょうか.仕事でどうしても継続して座位姿勢をとらなければならない!という人は,座ったまま踵を上げ下げしたり,膝を曲げ伸ばししたりして,足の筋肉を動かして少しでもじっとしている時間を減らしてみましょう.また家でのテレビ視聴など、同じ姿勢でいる時間も気にしてみてください.





1時間座ると
寿命が22分縮む