■暑熱順化
梅雨が明けて夏も本格的になってきました。暑い夏を健康に乗りきるにあたって、力を入れたいのが熱中症への対策ですが、皆さんは“暑熱順化”という言葉を知っているでしょうか。
暑熱順化とは、暑さに対して身体に耐性がついてくることを言います。暑い日が出始めの頃は、暑さに対して身体が非常につらいと感じますが、夏も本格的になってくると、熱いに違いはないけれども、つらさは以前ほどではなくなった、という経験は無いでしょうか。これは身体の暑熱順化が進むことで起こる変化です。
■身体の熱が放出できないと熱中症になる
人は活動することで、体内で常に熱を生み出し続けています。だからこそ体温が維持できるのですが、体温が上がりすぎた場合は、発汗することによる気化冷却や、皮膚血管拡張による熱放射により体温を下げています。
この調節がうまくできなくなり、体内に熱が溜まりすぎてしまうと熱中症が引き起こされます。発汗能力、血管拡張能力が不十分だとこのようなことが起こります。
■夏の初めは暑熱順化できていない
一年のうち、さほど気温の高くない季節であれば、体温調節の必要性はあまり高くなりません。気温差によって、熱は勝手に体外へ放出されていくからです。
しかし気温が高くなるとそれでは間に合わなくなるため、発汗や皮膚血管によって体温調節する必要性が高まります。徐々に気温が上がってくれるのであればあまり問題ないのですが、夏に入り急激に気温が上がり始めた頃は、まだ汗腺や皮膚血管の働きが追い付いていないため、体温を必要な分だけ下げることができず、熱中症のリスクが非常に高いのです。
また汗腺の働きが弱いと発汗時の塩分の再吸収能力が低いため、必要以上に塩分が排出されてしまい、電解質異常を引き起こすリスクもあります。
■適度に汗をかいておくことが必要
暑熱順化を促すには、体温の上昇に体を慣れさせることが重要です。実際に気温が上がって熱中症のリスクが高まる前に、体温が上がる行為をこまめに行い、汗腺や血管の機能を高めておきましょう。
■ランニング・ウォーキング
15〜30分程度で適度に汗をかく運動が効果的です。他にも車で移動していたところに自転車で行ってみる、エレベーターではなく階段を使ってみるなど、日常生活で運動を増やせそうな場面では意識して増やしてみましょう。
■入浴
シャワーではなく、浴槽にお湯をはってじっくり入浴し、しっかりと汗をかきましょう。入浴の前後には水分と適度な塩分を補給してください。
■暑熱順化の戻りに注意
暑熱順化が完了するには個人差があり、数日から2週間ほどかかります。もちろん上記の活動をこまめに行えば、それだけ早く暑熱順化が進みます。ただし気を付けて欲しいのは、暑熱順化が完了したとしても、数日間あまり汗をかかない生活を送ると、暑熱順化は元に戻ってしまうということです。
例えば梅雨でしばらく気温が下がっていたところに急に暑い日が来る、お盆の帰省などでエアコンの利きすぎている環境で過ごしてから元の生活に戻るなど。暑熱順化が戻ってしまっている可能性があるため、このようなタイミングでは特に熱中症に注意しましょう。