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イラストレーターと
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見出しNo.42 冬の浴室は交通事故よりも危険

浴槽内で毎年多くの人が亡くなっている

 寒い時期になり、温かいお風呂がありがたいですね。しかし浴槽のお湯は温かくても、気をつけたいのが浴室、脱衣室の温度です。
 私たちの身体は短時間に急激な温度変化にさらされると、血圧が激しく上下に変動し、その結果、循環器系の疾患を引き起こしやすくなります。これをヒートショックと呼びます。2017年の調査では、交通事故の死亡者数が年間3600人程度であるのに対し、浴槽内での溺死者数は5536人にものぼります。溺死だけでなく、ヒートショック関連の死亡者全体にまで対象を広げると14000人程度と、いずれも交通事故の死亡者数をはるかに上回っています(厚生労働省、人口動態調査より)。


ヒートショックとは

 ヒートショックについて、もう少し詳しく解説してみましょう。ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が乱高下し、循環器系の疾患を引き起こすことを言います。
 例えば冬場、暖房のきいたリビングから脱衣所に移動し服を脱ぐと、体表が冷たい空気にさらされるため血管が縮み、血圧が上昇します。そこからさらに寒い浴室内に入ると、血圧上昇はさらに加速します。この時点で血圧上昇による脳卒中のリスクがあります。
 そして熱い浴槽に入ると、今度は全身の毛細血管が広がり、反対に血圧の低下が起こります。これによりお湯につかった状態で意識消失、さらには溺死のリスクがあります。先に述べた、浴槽内での溺死者数が交通事故による死亡者数よりも多いという事実が、ヒートショックの危険性を裏付けています。


予防のポイント

 そんな恐ろしいヒートショックですが、原因がはっきりしているので対策を立てることができます。ヒートショックの根底にあるのは温度差ですから、なるべく温度差を小さくすれば良いわけです。冬場の今頃は、リビングは温かくても脱衣所、浴室の暖房には気が回りにくいですから、お風呂に入る前に脱衣所や浴室を暖めておくことが大事です。
 お風呂のお湯の温度も、42℃以上では心臓に負担がかかることが知られています。41℃以上で浴室での事故が増えるとの報告もありますので、湯温は38〜40℃に設定するのが良いでしょう。
 またお湯につかってリラックスしている状態から急に立ち上がると、低血圧によるめまいを起こしやすく危険です。滑りやすい場所でのめまいは転倒に繋がります。浴槽から出る時は一旦フチに座るなど、ゆっくりと立つことを心がけましょう。
 以上のことから、ヒートショック予防のポイントは以下の3点です。

 @浴室暖房や脱衣所での暖房器具を使って暖かくする
 Aお湯の温度は38〜40℃に設定する
 Bお湯から出る時は立ちくらみに注意してゆっくりと


トイレにも同じリスクが潜む

 浴室でのヒートショック対策についてお話ししましたが、もう一つ、忘れてはいけないのがトイレです。朝、布団から出て寒いトイレに入ることで血圧が上がり、いきむことでさらに血圧が上がります。そして排便後は急激に血圧が下がりますので、実はトイレも浴室と同じく血圧が乱高下しやすい場所なのです。
 近年、トイレ用の暖房器具が注目され始めてもいますので、浴室と同じく、トイレのヒートショック対策にも気を配ってください。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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