■段差をなくすことだけがバリアフリーではない
バリアフリーという言葉が世間に登場して久しく、今では完全に市民権を得ているように思います。もはや一般化しすぎて、改めてその意味を考える機会の少ないバリアフリーですが、生活環境において、段差などの障壁をなくすことだけをバリアフリーと捉えていないでしょうか。バリアフリーには全部で4つの要素があり、段差など物理的なバリアをなくすことは、そのうちの1つの要素に過ぎません。
日頃当り前のように目にするバリアフリーという言葉について、見落とされがちな他の3つの要素も整理して、正しい知識を身につけましょう。
■物理的なバリア
公共交通機関、道路、建物などにおいて、物理的に利用者の妨げとなるものです。バリアフリーのバリアといえばまずこれ、という印象があります。実際目に見えるものですし、取り組みやすいのも事実です。
道路の段差などが典型的ですが、他にもエレベーターのボタンが高い位置にあり車椅子使用者には届かなかったり、滑りやすい床材でバランス能力の低い人が歩くのに苦労したりと、健康者の目線からは気付きにくいものもあります。
■制度的なバリア
社会のルールや制度によって、障害のある人が、能力以前の段階で機会を奪われてしまうことです。例えば学校の入試、就職や資格試験などで、障害があることを理由に受験や免許などの付与を制限されたり、参加の機会を奪われてしまうことです。
これらは昨今においては、バリアへの理解が進みずいぶん解消されてきたように思いますが、盲導犬を連れた人が入店を断られるなどといったこともあるようです。
■文化・情報面でのバリア
情報の伝え方が不十分であるために、必要な情報が平等に得られないバリアのことです。例えば文字のみ、音声のみのアナウンス、タッチパネル式のみの操作盤など。
携帯電話はもうほとんどがガラケーからスマートホンに変わってきていますが、視覚障害者にとってはスマートホンのタッチパネルを扱うにはかなりのトレーニングが必要らしく、ボタンがはっきりしているガラケーの方が使いやすいといった声もよく聞きます。
■意識上のバリア
障害者への偏見や差別、無知や無関心などにより、障害者を受け入れないバリアのことです。
例えば、精神障害のある人は何をするかわからないから怖いといった偏見や、可哀想な存在だとする決めつけなど。また視覚障害者用の黄色い誘導ブロックに無関心で、無意識に上に立ちふさがったり物を置いたりすることで、視覚障害者の移動を妨げてしまうことなどです。
■全ての人が使いやすく
以上がバリアフリーの4つの要素です。私たちの生活は時代の流れとともに変化し、それを取り巻く環境も移り変わるものですから、この4つの要素も今後は変わっていく可能性があります。ですから明確な定義より、このような4つの視点があるのだ、と捉えた方が良いでしょう。
また対象者を限定せず、全ての人が使いやすい環境が理想的ではありますが、ある人にとっては使いやすくても、ある人にとっては良くない、ということもあります。例えば視覚障害者用の黄色い誘導ブロックは、車椅子や杖の利用者にとっては移動しづらい原因となります。
人々の意識の向上や技術の進歩、画期的なアイデアによってバリアフリーは進歩していきますので、今回のような分類を手掛かりに、身の回りに存在するバリアに注目してみてください。