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イラストレーターと
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見出しNo.51 いつまでも元気に歩くために、筋トレを頑張ろう

過負荷の原理

 前回のコラムで、高齢になっても歩行能力を保つためには大腿四頭筋、大殿筋、腓腹筋、ヒラメ筋の筋厚を保つことが重要とお伝えしましたが、今回はそれらの筋肉を集中的に鍛えるトレーニングメニューを紹介します。なおこれ以降、腓腹筋とヒラメ筋はあわせて下腿三頭筋と呼称します。
 まず筋力トレーニングの基礎について少し解説しておきます。一般に「筋力トレーニング」と呼ばれるものは最大筋力をトレーニング向上させるためのトレーニングを指します。最大筋力が上がれば、今まで持てなかった重いものが持てたり、できなかった動作ができたり、今までもできていた動作がより楽にできるようになります。
 そして筋力トレーニングは「過負荷の原則」という理論に則っています。過負荷の原則とは、身体に一定以上の運動負荷を与えないと筋力は向上しないという原理です。つまりその人にとって楽な運動ばかりしていても筋力は向上せず、また筋力が上がれば、それに応じて負荷も上げていかなければならないということです。


自分にとっての10RMを決める

 ではその楽かどうかの判断基準は何かというと、「10RM」の負荷が筋力トレーニングに最適とされています。RMとはRepetition Maximum(最大反復回数)の略で、前にある数字とセットで、その回数を何とかやりきれるくらいの負荷を表します。例えば腕立て伏せを10回は何とかできるけれど11回は無理となると、その人にとって腕立て伏せは10RMの負荷ということになります。
 筋力トレーニングはこの10RMの負荷で行うのが最も効率が良く、20RMを超えるような軽い負荷では効果が落ちるとされています。そのため自分にとって10回前後で終えられるような負荷に調整することが重要です。もちろんトレーニングを続けていれば筋力は上がり、10回以上できるようになってくるでしょうから、定期的に見直しが必要です。

※今のところ20RM以上の軽い負荷では筋力向上は期待できないというのが定説ですが、最近では20RM以上の軽い負荷でもその分回数を増やせば筋力向上が見込める、という研究論文も出てきています。しかし回数を増やして追い込むのは相当な苦痛を伴う練習であり、継続して行うのは困難と考える為、このコラムでは10RMを基本の負荷として扱います。


歩行に重要な筋肉を同時に鍛えることのできるトレーニング

 次に、前回のコラムで重要と説明した、大腿四頭筋、大殿筋、下腿三頭筋を同時に鍛えることのできる筋力トレーニングを紹介します。ただしこの筋力トレーニングは、現在安全に歩ける身体能力を持っている人が、今後も歩き続けるために必要な筋力を保つためのトレーニングです。難易度はやや高めのトレーニングですので、身体能力に自信のない方は無理をしないようにしてください。また左右のバランスが必要な姿勢になりますので、バランスをとるのが不安な方はイスやテーブルなどを手すりがわりにして行ってください。


ランジ

1.まっすぐ立った状態から、片足を大きく前に開きます。足の開きが小さいと膝の負担が大きくなって痛みが出ることがあります。思い切って大きく前に出しましょう。


2.背筋を伸ばして上半身を起こしたまま、股関節と膝を曲げて腰を落とします。膝を90°くらいまで曲げたら、ゆっくり元の姿勢に戻します。膝はつま先より前に出さないようにしましょう。また膝が内側に入らないようにしてください。
これを繰り返します。


※10回くらいで限界を迎えるようであれば、ちょうど10RMの負荷と言えます。慣れてきて10回以上楽にできるようになってきたら、ダンベルを持つなどして負荷を調節してください。


ブルガリアンスクワット

1.さらに強い負荷の練習ができる人であれば、ブルガリアンスクワットがおすすめです。イスの前に60〜90cm離れて立ち、片足のつま先を椅子の端にのせます。足の開きが小さいと膝の負担が大きくなって痛みが出ることがあります。前後に大きく開きましょう。


2.背筋を伸ばし、ゆっくりと前方の足を曲げて腰を落とします。膝を90°くらい曲げたら、ゆっくり元の姿勢に戻します。膝はつま先より前に出さないようにしましょう。また膝が内側に入らないようにしてください。
これを繰り返します。


最後に

 歩くことは、日常生活において移動の基盤になるだけでなく、全身の筋肉をバランスよく使って身体機能を保つための便利なトレーニングでもあります。いつまでも不安なく元気に歩けることは、健康寿命を伸ばすための大事な要因ですから、練習は大変ですが頑張ってみましょう。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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