本文へスキップ

イラストレーターと
ハンドメイド作家の
理学療法士のサイト

見出しNo.No.52 健康な人がサルコペニアになる理由

サルコペニア

 フレイルとともにサルコペニアという言葉が登場して久しく、テレビ番組等で取り上げられるなど、耳にする機会が増えてきたように思います。
 現在ではサルコペニアに関する研究もかなり進んでいますから、具体的な対策はそれぞれの切り口からその専門の方の解説に任せるとして、今回のコラムでは、あまり注目はされませんが無視できない一次性サルコペニア、いわゆる加齢によるサルコペニアについて解説します。


健康な人でもサルコペニアになるかもしれない

 サルコペニアとは筋肉量の減少に伴って筋力や身体機能が低下している状態を指し、握力や歩行速度など具体的な診断基準もあります。その原因の多くは運動不足や栄養不足など、いわゆる健康ではない状態を経過することで引き起こされます。そのためほとんどの人は「栄養はしっかり摂っているし、適度に運動もしているから自分には関係ない」と思ってはいないでしょうか。実はサルコペニアのリスクは30代くらいから全ての人にあります。しかも健康であってもです。
 サルコペニアには一次性サルコペニアと二次性サルコペニアがあります。二次性サルコペニアの原因は低活動、低栄養、疾患などから起こり、一般にサルコペニアとしてイメージされるのはこちらの方だと思います。
 一次性サルコペニアも同じく筋肉量の減少が起こるものですが、こちらは加齢以外に原因が認められないものです。加齢現象ですから、健康的な生活を送っていたとしても生じるリスクがあります。次の項で詳しく説明します。


運動していても筋肉量の減少は避けられない

 上の図は、2010年に日本老年医学会誌で発表された論文「日本人筋肉量の加齢による特徴」を基に作成したグラフです。18歳以上の日本人4003人(男性1702人、女性2301人)を対象とし、上肢、下肢、体幹部の筋肉量の測定を行いました。その結果、全ての部位で筋肉量は加齢に伴い減少することが分かりました。特に減少率が大きいのは男性の下肢で、20歳台の筋肉量を100%とすると、80歳台では69.1%まで減少します。つまりおおよそ2/3の量になってしまうということです。

 人は加齢により、筋肉を構成する筋線維の数が減少し、さらに筋線維自体も細くなることが分かっています。これは加齢に伴う生理現象のため、運動習慣のあるなしに関係なく起こる変化です。
 筋力トレーニングを習慣的に行っていて、筋肉量の多い人であれば、筋肉量が2/3になっても日常生活の動作がままならなくなるということは無いでしょう。しかしもともと痩せ型の人の筋肉量が2/3になれば、現在行えている動作ができなくなるということがあるかもしれません。このような筋肉量の減少を背景として、握力や歩行速度などが基準を下回った場合、けがや病気をしなくてもサルコペニアと診断されます。


筋力トレーニングをしよう

 「貯筋」という概念がありますが、今から筋肉を貯めておけば、加齢により筋肉量が減ったとしても現在の生活スタイルを維持することができます。ジョギングやウォーキングに代表される有酸素運動は、心肺機能を維持するために非常に有効な運動です。しかし有酸素運動には筋肉量を増加させる効果はないため、加齢による筋肉量減少を補うためには、有酸素運動とは別に筋力トレーニングが必要となります。
 筋力トレーニングと聞くと、もう若くない自分には無理ではないかと思う方もいるかもしれませんが、筋力トレーニングによる筋力向上は何歳になっても可能です。筋力トレーニングのメニューも様々なものが考案されていますから、きっと自分に合ったものが見つかるでしょう。
 現在の生活スタイルを今後もずっと守っていくために、今できることから始めてみましょう。


参考文献
 谷本 芳美, 渡辺 美鈴,他:日本人筋肉量の加齢による特徴.日本老年医学会雑誌 2010 ;47(1):52-57




青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

Mail:sofu-s★sofustudio.com
(★を@に変えて送信してください)