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見出しNo.54 素材による車いすクッションの特徴

座っていて楽なものは動きにくくもある

 前回のコラムでは、車椅子のクッションに求められる機能について解説しました。車椅子のクッションにはおもに除圧機能と姿勢保持機能がありますが、この2つの機能が高いほど反面、動きにくくなるというデメリットがありますから、身体能力にあったものを選ぶことが重要です。
 今回はそれを踏まえて、素材や形状による性能の違いについて解説します。その人の能力や目的によって、クッションのどの性能が最も重要なのかが変わってきますから、このコラムで最適なクッションのタイプがわかるのではないでしょうか。


クッションは値段が高いほど性能も高いの?
■ウレタン
いわゆるスポンジの一種で、多孔質の柔らかい物質です。加工しやすく硬さも様々なため、バリエーションに富みます。一口でウレタンの車椅子クッションと言っても使用感にかなり差があるため、購入の際は実際に座って確かめた方が良いでしょう。

・価格は安め
・形状を加工しやすく姿勢保持機能を高めやすい
・長期間の使用でへたりやすく、水分や紫外線で傷みやすい。耐久性は低い。
・素材が同じなら厚いほど機能が高い
・薄いものは底付きしやすい
・軽い

■ゲル
柔らかいゴムのような素材で、除圧と衝撃吸収に優れます。立体的な加工には向いていないため、均一な厚さのシート状のクッションがほとんどです。薄くても効果がありますが、重い、蒸れやすいといった問題もあります。

・価格は高め
・除圧性能、衝撃吸収機能は高い。剪断方向の力を和らげる。
・薄い
・通気性は悪い
・劣化しにくい
・冬は冷たい
・重い

■エアー
おおよそ5cmほどの空気の入ったカプセルが一面に並んだ構造で、それぞれのカプセルが空気経路で繋がっているため、圧力を効率的に分散させることができます。効果が高い反面、空気量調節やメンテナンスに専門的知識が必要です。

・価格は高め
・除圧機能は高い
・姿勢保持機能は低い
・定期的な空気量のチェックが必要
・軽い

■複合
ウレタンとゲルの複合タイプです。基部をウレタンによる立体的な構造で姿勢保持機能を持たせ、殿部や大腿部など接触する部分にゲルを配置して除圧機能を高めたものです。除圧機能、姿勢保持機能共に高いですが、接触する部分はゲルのため、冷たい、蒸れやすいといった問題もあります。



自分の能力と目的に合わせて選ぼう。「とりあえずウレタン」でも良い

 以上が素材によるクッションの特徴です。まだクッションを使った経験が浅く、よく分からないという方のとりあえずの1枚としては、安価で取り扱いの簡単なウレタンが良いでしょう。長期使用でだんだん劣化してきますから、その頃には自身の能力やクッションに求める機能がなんとなく把握できてくると思います。
 お尻の感覚が正常で自分で除圧ができる方も、安価で使いやすいウレタンがおすすめです。あとはご自身の運動能力に合わせて姿勢保持機能を選ぶと良いでしょう。座って実際に上半身を乗り出すなどして動いでみると、しっくりくるものが分かりやすいです。
 自分で除圧するのが難しい方はゲル、かつ座っているとだんだんと姿勢が崩れてきてしまう方は複合タイプがおすすめです。
 脊髄損傷のようにお尻に感覚障害があるけれども運動能力が高く、かつ快適性を追求したい方にはエアーがおすすめです。また過去に褥瘡ができた経験があったり、自分であまり動かないという方も同様です。ただしエアータイプは圧力調整など取り扱いが難しいため、定期的に専門家のメンテナンスを受ける必要があります。



青木双風(あおきそうふう)青木双風

イラストレーター
ハンドメイド作家
理学療法士

趣味のイラストや工作の展示、イラスト素材の制作などをしています。

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